インド料理を学ぶ、ことにした。その3
どうやらオレは、この料理を、インド料理を学ぶことを決めたのだ。多分。別にそんなことを決心した覚えもないし、自覚もないのだが。どうやらそういうことらしい。そして、あらためてふりかえると、その衝動は「食べたい」ではなく「つくりたい」「やってみたい」であった。食欲ではなく知識欲のフィールドに起こった衝動のように思える(インドの露店やレストランの映像をみると猛然と「食べたい」になるのだが)。
オレを啓蒙し、この衝動を起こしたのはサンジェイ・トゥンマ先生である。それはまるでどこか天空から光が射し込んできて、いままで見えなかったものが見える、見たことのないものが突然目の前にあらわれる、そんな体験だった。「そうだったのか!」オレはまさに啓蒙されたのである。
サンジェイ先生のインターネットの番組『ワ・レ・ワ・ドットコム』(vah reh vah.com)で紹介されたレシピを先生のやり方、教えにならってつくる。幅広く色々なひとから学ぶ、という選択もあるが、オレは愚直にサンジェイ先生の教えてくれることを身につけることにした。教えられたことを、可能なかぎりそのとおりやってみる。レシピを見なくてもそれができるまで、つまり、みそ汁や煮魚をつくるときとおなじく自然に手が動くまで、勝手なあるいは意図的なアレンジはしない(もちろんオレは修行しているのではないし、あくまで余暇の「楽しみ」だから(本当だろうか?)、必要に応じ臨機応変でやるが)。オレはかれらの味覚を知りたい、あの行為を経験したい、いや「世界」を知りたい、そういうことかもしれない。